「ダメ人間」の履歴書。

働くの大嫌いな俺様がイヤイヤ働いてきた記録。

第12章 製本工場

またしても失業してしまった俺は、当時の定番求人情報誌『フロムエー』を買いに行った。

そして見つけたのが「誰にでもできる簡単な仕事。」だった。
どうやら製本工場で、出来上がった本を仕分ける仕事らしい。

場所も自宅から徒歩25分、自転車なら10分といったところか。

近いので、早速、面接に行ってみた。

担当者は軽く履歴書に目を通しただけで、
「いつから来れる?」と言った。
即決で採用だった。
しかも履歴書も持って帰ってくれと言う。

こんなアッサリ採用されて履歴書も不要とは。
こんな会社がある事を初めて知らされた。
「誰にでもできる仕事」とは誰でも働ける仕事という意味だったのか?

とりあえず採用された事に安堵し、今日は帰って明日からの仕事に備えようと思った。

あくる日、工場へ行くとロッカールームへ案内された。だが・・

・・・、臭い!すごく臭い!!
何と言ったらいいのか・・鼻が曲がりそうだ。
いや、鼻どころか、眼にしみる!

見ると、周りにいるオヤジ達は一見、浮浪者に見える。
いや、日雇い労働者ってやつか?
ほぼほぼホームレスと変わらない容姿だ。

担当者からはロッカーの鍵は必ず施錠してくれと言われた。
実際、盗難はしょっちゅうだと言う。

そりゃ、あんな簡単な面接で即採用だから集まる人間も知れてるって事か。

で、仕事は。って言うと・・。
ベルトコンベアに乗って流されてくる伝票を見て、書かれている冊数の本をベルトコンベアに乗せる。
ただこれだけ。

確かに「誰にでもできる簡単な仕事。」だ。

だが俺は5分で飽きてしまった。
簡単すぎてつまらないのだ。

それに稼働中はずっと立ち続けなくてはならない。
移動は許されないのだ。
トイレにも行けない。
ロボット役に徹しなければならない。

これが「誰にでもできる簡単な仕事。」の正体だった。
確かに誰にでもできる。だが、
誰にでも務まるわけではないだろう。
俺には楽しくもなんともない。

さて、ここの職場、稼働が終わると電気が消されて真っ暗になるのだが、この時、本を盗むやつがいた。

当時は手荷物検査は実施されておらず、毎日チョット盗んでは、古本屋に売りに行っていたらしい。

まぁ、ロクに身分確認もせずに採用しているから、まともじゃない人間もいるのだろう。

そして、驚いた事に、給料は毎日手渡しだった。
当時は今ほど銀行振込は一般的ではなかったと思うが、毎日手渡しとは・・。
所謂、「取っ払い」ってやつか。

結局、ここの会社もすぐに辞めてしまった。

仕事は簡単すぎて退屈だし、何よりロッカールームが臭い。
俺は潔癖症ではないと思っていたが、どうやら軽い潔癖症のようだ。

そして、ここの浮浪者ようなオヤジにはなるまい。と思っていたのだが、これを書いている現在、俺は失業中である。
浮浪者の一歩手前で踏みとどまっている状態だ。

天職など無い。あるのは転職だけだ。


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