「ダメ人間」の履歴書。

働くの大嫌いな俺様がイヤイヤ働いてきた記録。

第6章 仲卸

また仕事を辞めてしまった俺は求人誌を眺めていた。
めでたくハタチを迎えた俺だが、生活は相変わらずカツカツだった。

この頃近くの公団(今はURっていうのか?)に住む おねーさんと仲良くなって、時々ごはんを食べさせてもらっていた。
とはいえ、彼女からも「早く働け」と言われているし、なんでもいいから仕事をしないといかんとは思っていた。

求人誌を捲る手を止めた。
「仲卸スタッフ募集」
以前、花卉(かき)市場で働いていたが、辞めてしまった。
なぜ辞めてしまったのか思い出せないが、辞めた後、後悔していた。
いい職場だったと思うようになったのだ。

そこで、同じ市場の別の業種(会社)で働いてみようと考えた。

電話を掛けると、即採用。
前歴も訊かずに採用かよ。
よっぽど人手が不足しているのか。
一抹の不安を感じつつ市場へ向かった。

行ってみて分かった事。
拘束時間が長い。
早朝に出社するのだが、昼で帰ってしまう従業員がいた。
パートタイムかと思ったが、違った。
前日の早朝から働いていたのだ。
30時間労働。

俺は初日だからと早く帰してもらえた。
とはいえ、10時間は働いている。
この頃の俺は体力はあったが、やる気と根性は今と同じくらい無かった。
初日で嫌になったが、まだ全てを見ていない。
もしかしたら、忙しいのは今日だけで、普段はもっとヒマなのかもしれない。
こんな淡い期待をしつつ、とりあえず明日も行くことにする。

2日目。
早朝に出社。
昨日、30時間働いていた先輩はすでに出社していた。
今日はこの先輩について競りに行くことになった。

ここの市場は当時すでに機械化されていて、他の市場では手のサインでやり取りしていたが、ここでは手元の機械のスイッチを押すだけだ。

お客さんから注文のあった品を競り落としたり、店の在庫になる品を競り落としたりした。

そのあと、様々な雑務をこなし、退社。
今日も10時間で帰してもらえた。
先輩は今日も帰れないとぼやいていた。
俺が育てば先輩は帰れるようになるそうだ。
って事は俺も将来的には長時間労働をする事になるのか。

残念だが、俺にそんな やる気や根性は無い。
それに、この仕事、時給が安いのだ。
これは分かっていた事だけど。

翌日、行く気がしない俺は、バックレた。
ここの会社とはもう、それっきり。
当時は給与を銀行振込にしていない会社も多かった。
この会社もそう。
俺は給料を取りに行かなかったから、結果的にタダ働き。
バックレておいてカネだけは取りに行く。そんな強靭なメンタルは俺には無かった。

この日の夜も団地のおねーさんにごはんを食べさせてもらった。
「早く働け」と小言を言われながら・・。