「ダメ人間」の履歴書。

働くの大嫌いな俺様がイヤイヤ働いてきた記録。

第3章 空調設備清掃

新聞配達を辞めた俺だったが、なんとか免許取得に必要なカネは稼ぐことが出来た。
さっそく中免(今でいう普通二輪免許)を取りに行った。

教習所に入所したのだが、そこはスパルタで地元では有名な教習所だったらしい。
俺は入所してから知ったのだが、黒板消しで叩かれたりチョークが飛んできたり、「昔の学校かよ!」って感じだった。

だが、教官の情熱は凄かった。時間外でも質問すれば何でも答えてくれた。
スパルタだけど評判は良かったみたいだ。

それと、一緒に教習を受けていたおねーさんと仲良くなった。
てか仲良くなりすぎて色々面倒くさい事になったりした。(あの おねーさんも今じゃオバサンになってんだろーな。)

まぁ、なんだかんだで免許を取得し、無事卒業した俺は次の仕事を探す事にした。
そう、バイクを買うためだ。
その頃は80年代のレーサーレプリカブームが終わり、90年代のネイキッドブームが始まっていた。
俺はカウルの付いてるレプリカの方が好きだったが、流行りのネイキッドも悪くないと思っていた。
どちらを買おうかと悩んだが、どちらにしてもカネが無けりゃ買えない。(なぜかローンという考えは浮かんでこなかった。)

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そこで始めたのが空調機の清掃の仕事だ。
たしか日給9500円。当時の最低賃金を考えると、悪くない額だ。
当時の求人誌、フロムAを見て電話を掛けてみた。(ネット応募なんて無い時代だ。)
電話に出た担当者から、なぜか体重を訊かれた。
ん?
この時はなぜ体重が関係あるのか分からなかった。
とりあえず俺は合格したようだ。
いつから来れるかと訊かれたから、さっそく明日から世話になることにした。
「善は急げ」だ。

当日、ツナギ服を渡された俺はハイエースへと乗り込んだ。
そしてハイエースは高速道路をぶっ飛ばした。
メーターパネルがピーピー鳴っている。
当時のクルマは速度超過すると警告音が鳴るしくみだったのだ。
ドライバーはこのチームのリーダーで元自衛官だという。
自衛隊で全ての免許を取得したと豪語していた。(のちにウソだと判明。自衛官だからといって何でも好き勝手に免許が取れるわけじゃないらしい。この人は普通免許しか持っていなかった。)

現場に着いた。そして、なぜ体重が関係あるのかを理解した。
ダクトの中に入るのだ。
映画『ダイハード』でマクレーン刑事がやったように、匍匐前進するのだ。
たしかに、デブじゃ入れないだろう。

リーダーから煙草は厳禁だと言われた。
俺は煙草は吸わないから関係ないが、危険性は理解できた。
ダクトの中に化石のように固まっている汚れを、溶剤をかけてスクレーパーでガリガリと削り取るのだが、この時、気化した溶剤と粉塵でダクト内はいっぱいになる。
そこで煙草に火でもつけようものなら粉塵爆発を起こす事うけあいだ。

粉まみれになって、まぁハードな仕事ではある。
でも給料は日払いでもらえるし、現場はわりと早く終わる事が多く、それでも日給は保証されたし、手っ取り早くバイク購入費用を稼ぎたい俺には都合がよかった。

でも長く続ける仕事じゃないな。とも思っていた。
既に何年も続けてるバイトの人がいたが、粉塵に肺をやられたのか、風邪でもないのに咳をしていた。
たしかに俺たちはマスクをしていなかった。
今よりも安全管理がいいかげんな時代だったのだろう。

バイク購入費用を稼ぎだした俺は、程なくしてこの仕事を辞めたのだった。