「ダメ人間」の履歴書。

働くの大嫌いな俺様がイヤイヤ働いてきた記録。

第24章 キャベツ農家

さて、また俺は某県に来ている。

もう、田舎は俺には合わないことは判っている。

なのに、俺はまた田舎にいた。

何故か?

知人の付き添いだ。
田舎暮らしに興味のある知人が、俺にそこまでの運転を頼んできたのだ。

俺はただの運転手か。

まぁ、チャンネエの頼みなので、特別に了解したのだった。

まぁ、失業者だし。ヒマだし。

今回はキャベツ農家。
春キャベツの収穫だ。

けっこうな力仕事で、俺も手伝う事に。
いや、もう運転手でいいんだけどな。

で、その収穫方法なのだが、
包丁を片手に、キャベツを傾げて、根本を切る!

って感じなのだが、なんだか、人間の頭を傾げて包丁でぶった斬っているみたいな感覚に陥る。

なにしろ包丁もったオッサンとオバサンとニイチャン(俺だ。)とネエチャンがうろうろしているのだ。

傍から見たら、危なくて近寄れないわな。

ここの仕事、時給は安かったが、昼飯はたくさん食べさせてくれた。

ここのオバサン曰く、「農家でパンはおやつ」だそうだ。

力仕事だから、パンでは力が出ないのだとか。
だから、食事は米、パンはおやつらしい。

もう、田舎はいいや。と思っていたところに、また田舎。
田舎の過剰摂取でお腹いっぱいだ。


第23章 イチゴ農家

さて、また俺は某県に来ていた。
今回は田舎バイトだ。

この頃の俺は田舎暮らしとかに興味を持ち始めていた。

都会育ち、都会ッコの俺には田舎への漠然とした憧れがあった。

田舎の人からすれば、「何言ってんだ」って感じだろうが、所詮、人は無いものねだりなのだ。

都会に無い何かがあると思いこんでいた。

で、田舎を知る足掛かりとして、農家でバイトしてみた。

時季としては、これから苗を植える頃だったのだろう、ハウスの中は土だけで、何も植わってなかった。

これから、土を殺菌するのだと言う。

同じ土に同じ作物を植え続けると、連作障害を起こすとかで、殺菌が必要なんだとか。

で、殺菌に使うのが、かのナチスが開発した毒ガス、チクロンBと同様の成分の農薬だとかで、これを畑に撒くのだが、ガスマスクも何もしない。

安全対策なんて何もないのが、時代なのだろう。

この毒ガス(農薬)とても苦しい。

目はもちろん開けていられない。

そして、呼吸ができない。

この時、人間は空気(酸素)しか吸えないという事に気づいた。

呼吸しようとするのだが、いや、肺は動いているのだ。
胸が膨らんだりしぼんだりする感覚はあるのだ!

だが、空気を吸っているという感覚は全くしない!

呼吸しているつもりなのに、苦しい。

目も見えない状態で、ハウスの外を目指して走った。

外の空気を吸う。

やっと呼吸の感覚が戻った。

始めての田舎体験は、「死にそうになった。」だった。



第22章 キャンプ場

俺は某県のキャンプ場に来ていた。

今回は遊んでいるわけではない。

仕事だ。

人伝てに話しが回ってきて、何かよくわからんうちに働きに来ていた。

この頃の俺はBMXの練習の為に、土手にジャンプできるコースなんかを造っていた。

夜中にユンボで勝手に造ってしまうのだ。

当然、役所に見つかれば潰されてしまうのだが、こちらもまた、別の場所に造るという、ゲリラ的活動をしていた。

それで、ユンボとブルドーザーの免許(正確には講習修了証で免許ではない。)を持っていたので、働きに行く事になったのだ。

俺の仕事はイノシシに掘り返されてデコボコになった地面を整地する事。

まぁ、やるのは重機なので、俺は座っているだけだから、なんてこたぁない。

ここのキャンプ場、敷地内に小川が流れていて、子供なんかは、ここで水遊びをするらしい。

んでもって、ここのキャンプ場、当時としては進んでいて、トイレがコンポジスト何とかってやつで、おが屑とウンコを混ぜて肥料が出来上がるっていう今流行のSDG何とかってやつみたいだ。

で、出来上がった肥料なんだが、どうみたってウンコにしか見えない。

百歩譲って肥料だとして、だったら畑に撒きたいところだが、あいにくこのキャンプ場に畑は無い。

ってんで、ここのオーナー、前述の小川に撒いてたな。

オイオイ、子供が水遊びするんじゃねぇのかよ。

俺は元々、短期の約束だったので、辞めて帰ってきたが、あのウンコまみれの小川、どうなったんだろ?


第21章 自動車整備

俺は長野県に来ていた。
白馬岩岳だ。
マウンテンバイクのダウンヒルレースに参戦する為だ。
ロクに働きもせずに、遊んでいた俺。

今回は春の岩岳
マウンテンバイクの聖地(当時)で行われるビッグレース、春の岩岳と秋の岩岳

春の岩岳ゴールデンウィークに開催されていたレースで、俺はそれに参戦していた。

ダウンヒルってのは夏の雪の無いスキー場で、下りのタイムを競う競技の事。

当時はマイク・キングとか、そのちょっと後にショーン・パーマーなんかが出て人気を博していた時代。

自転車雑誌、特にバイクラなんか99%がMTBで、ロード 一色の現在からは想像もつかないくらいのダウンヒルブームだった。

なにしろ、ゴンドラで自転車を上げてもらうのだが、ゴンドラ待ちで1時間以上並ぶなんてのはザラだったのだ。

初夏とはいえ、プロテクターを着た状態で並ぶのは暑かった。
でも上のスタート地点には、まだ雪が残っていたり。

実はこのレースの前日、自動車整備工場への就職が決まっていた。
ゴールデンウィーク明けから就業することになっていたのだ。

さて、長野県から帰ってきた俺は、新しい職場へ向かった。

で、すぐにまた辞めてしまった。

手が汚れるのが嫌だったのだ。

この頃から軽い潔癖症を患い始めていたようだ。

また失業者だ。


第20章 N○K集金

さて、また失業者となってしまった俺だ。
その日も求人誌を捲っていた。

ふと目に止まったのは、某テレビ放送局の受信料集金の仕事だった。

委託と書いてあった。

若さゆえの無知か、この時の俺には委託の意味が分からなかった。

まぁ、行って説明を聞けば解るかと、電話を掛けてみた。

すると、一次審査は書類選考なので、履歴書を送ってくれという。

さすが、天下のエヌエッチ・・そう簡単には面接もさせないぜ!

数日後、電話が掛かってきた。
どういうわけか、書類選考を通ってしまったらしい。

俺は面接会場へ向かった。

面接では業務委託の説明を受けた。

ふむふむ、なるほど、個人事業主になるのか。

そして、この仕事の素晴らしさをやたら聞かされた。

個人事業主は言ってみれば社長ですよ!」とか、
「集金すればするほど儲かります!」とか、
「取り立てのノウハウがあるから、絶対に集金できる!」とか。

後日、採用の電話をもらったが、俺は断ってしまった。

だって、絶対に集金出来るとか言ってたけど、そんなのウソだから。

そう、この頃の俺は受信料を払ってなかったのだ。

しかし、なんで俺を採用しようと思ったのだろう。
俺だったら、俺なんか絶対に採用しないのにな。



第19章 おしぼり屋

さて、また失業者となってしまった俺だが、突如、おしぼり屋で働く事になった。

友人の妹がバイトしているとかで、その妹からの紹介であった。

てか、友人の妹にまで、俺のダメ人間ぶりが伝わっているのか!

情けないが、仕事が無いのは実状なわけで、働きに行く事にした。

なんでも、人が集まらないとの事だったので、キツイとか汚いとかの仕事なのだろう。

俺に出来るか?続くとは思えないのだが。

まぁ、とりあえず行ってみた。

ここでの仕事は、顧客の店から回収してきた、おしぼりを洗浄し、再び商品として、顧客に届けられる状態にするというもの。

俺に与えられた持ち場は、回収してきたおしぼりが入ったコンテナをベルトコンベアの上にぶちまけるといった作業。

ベルトコンベアに載せられたおしぼりは、漂白液の中に投入されていくのだ。

簡単な作業だが、ラクではなかった。
というか、ちょっとした地獄だった。
プチ地獄。

回収されてきた、おしぼりたが、これは湿っている上にちょっと生暖かい。

これがGのつく虫には良い環境らしく、コンテナを逆さまにして、ぶちまけると、小さいGどもが、飛び出してきやがる!

虫嫌いの俺には震えが走った。

Gどもはおしぼりと一緒に漂白液へ投入されていった。

奴らはきっと皆殺しであろう。

なんとも気色悪い仕事だ。

まともな神経では続けられない仕事だと思った。
だからなのか、同僚には、健常者はいなかった。

頭脳やら精神やらに、何らかの疾患を持っている者がほとんどだった。

そのせいか、休憩時間に話し掛けても、ほとんど会話が成立しなかった。

語り合える同僚もいない職場ってどうなのよ?

友人の妹とも会わなかったな。
どうやら、別の建物で働いているらしく、そちらは綺麗に仕上がったおしぼりを包装しているらしい。
そこは女性だけの持ち場だそうだ。

こちらとはエライ違いだ。
こちらはもう、Gと・・・。

結局、友人の妹の紹介で入ったにもかかわらず、俺はすぐに辞めてしまった。

ダメ人間ぶりに磨きがかかったと友人たちも思ったに違いない。

それと、この職場、漂白液がやたら目にしみたな。



第18章 現像液製造

まーたまた失業中の俺である。

毎週、求人誌を眺めるパターンは変わらない。

この頃には、とっくにバブルは弾けていたので、「デイリーan」はデイリーではなくなり、週刊になっていた。

発売日に求人誌を手に入れ、先方に電話を掛けても、話中になる事が多かった。

求人に対して応募が殺到していたのだろう。
それくらいの売り手市場になっていた。

だから、俺のような「若さ」以外にとりえも無く、やる気も無い者には就職は難しい時代になっていた。

こうなってくると、簡単に就職できるのは、他人がやりたがらない職種に限られてくる。

この頃から、
他人がやりたがらない仕事に就く→退職
というパターンが続く事になる。

という事で、今回は現像液製造の仕事だ。

とりあえず自宅から近かったのと、前述の状況により、採用されたのがココだけだったからだ。

ここの仕事、正直、何を作っているのかよく分からない。

ただ、重い、臭い、汚れる、と人がやりたがらない要素は揃っていた。

さて、ここでの仕事は前日の作業の片付けから始まった。

毎朝、散らかっているのを所定の場所に戻し、整頓するのだ。

先輩からやり方を教わるのだが、この先輩、とにかく「見とけ!」しか言わない。

一通り見せた後、「じゃあ、もう出来るな。やってみろ!」と言うのだが、

一度見ただけで、全ての手順を覚えて完コピなんて出来るわけがない。

「なんで、出来ないんだ!もう一度見とけ!」

と、また見せられる。
実際にやりながら、体を動かした方が覚えられると思うのだが、この先輩はそうは思っていないようだ。

先輩が馬鹿なのか俺が馬鹿なのか分からないが、
ただ黙って見る→実践→完コピならず。
を数回繰り返した後、ようやく完コピとなり、この日の作業を終えた。

結局、この仕事も、先輩が馬鹿すぎる(俺も馬鹿なのだろうが。)ので、辞めてしまった。

カメラがデジタル化し、写真の現像が不要となった現代、この会社、現在はどうなっているのだろう。