第4章 花卉市場
さて、バイク購入資金を調達した俺は、バイク屋を歩いてまわった。
しかし、郊外のバイク屋ってのはホントに不便だな。
バイクを持ってないから買いに行くってのに、バイクが無いと行けない立地にあったりする。
駅まで迎えに来てくれる店もあるけど、送迎してもらったら、買わなきゃいけない空気にならないか?
まぁ色々巡って、某バイクを購入した。
今となっては懐かしいキャブレター。
冬は一発でエンジンなんて始動しない。
今じゃ製造すらしていない2スト。
排気量は車検のいらないニーハン(250cc)にした。
とにかく楽しくて、乗り回して遊んでた。
この頃、未亡人のおねーさんと仲良くなって、おねーさんにも乗っかっちゃったりしてた。
しかし、遊んでばかりもいられないので仕事を探し始める事にした。
例によって求人誌を見ていたら、見慣れない字が目にとまった。
「花卉」。最初なんて読むのか分からなかった。
「かき」って読むらしい。
読み進めていくと、どうやら花の市場らしい。
俺はきれいなモノが好きだ。
きれいな花に囲まれて働いてみたい。
安易にそう思ってしまった。
面接に伺うと、あっさり採用された。
この頃は若かったから、採用率も高かった。
今じゃほとんど落とされるのだから、「若い」ってのは最強なんじゃなかろうか?
仕事は市場で競りにかけられた花を各お店毎に仕分けるってやつだった。
まぁ、肉体労働だな。
でも花だから重くはなかった。
それとここのイイトコは食事が出ることだ。
実家を飛び出して一人暮らしを始めたばかりの俺は、まだ料理なんて出来るハズもないわけで、食事が提供されるのは有り難かった。
あと面白かったのは、輸入されてくる花に虫がついてくる事があって、真っ白い大きなカマキリだとか、見た事のない虫をたびたび目撃していた。
この仕事、けっこう気に入っていたと記憶している。
なんで辞めたのか思い出せない。
辞めなきゃ違う人生が待っていたのかもしれない。
まぁ、辞めてしまったのだから仕方ない。
そうして、今も俺は「ダメ人間」継続中だ。