第7章 新聞駅配
またしても仕事を辞めてしまった俺は、日がな一日テレビを観たり本を読んだりして過ごしていた。
そうしているうちに、生活リズムが乱れ、すっかり夜型人間になってしまった。
そこで、深夜バイトを始める事にした。
新聞の配達だ。と言っても以前やっていた事のある、個人宅への配達じゃない。
駅の売店へ配達するのだ。
会社は当時の俺の家からは徒歩で15分くらいだったと思う。
会社のすぐ近くに公園があり、俺は中学時代の同級生(こいつは実家暮らしのニートだ。)と夜中にその公園で遊んでいたのだが、その時にこの会社の存在を知ったのだ。
ちょうどバイトを募集していたので、応募したわけだ。
で、深夜に会社に集合する事になった。
行くと、名前も訊かれず、自己紹介も無く、新聞をトラックに積み込めと指示された。
積み終わると、荷台に乗り込めと言う。
荷台に乗車する事が道交法的に正しいかどうかは俺には分からない。
ただ、交差点を曲がるたびに大きく振られ、乗り心地は良くなかった。
これから地下鉄の駅に向かうと言う。
駅に着くと、入口のシャッターは半開きになっていたり、または閉まっていたりした。
閉まっている場合は自分たちで開けて入った。
新聞は肩に担いで運んだ。
トラックの下に立つと、荷台に乗ったやつが、新聞を肩に載せてくれる。
俺は新聞の束を1個載せられて、行こうとしたら、
「まだまだ」と言われた。
そして更にもう1個載せられた。
「初めてだからこれくらいにしとくか。」
と言われたが、2個でもフラフラだった。
力自慢のオジサンがいて(この人もバイト)両肩に2個ずつ計4個を担いで、しかも走って階段を降りていった。
俺は、こういった力自慢のオジサンが苦手だ。
俺が生来、非力だというのもあるが、何というか、
力持ちが偉いみたいな(実際、偉いのかも。)、
力持ちは男らしいみたいな(実際、男らしいんだろうな。)とか、
俺が憧れてもいない事を自慢してくるのがウザイと思っていた。
この頃の俺は、いい歳したオジサンがバイトをしているのが理解出来なかった。
だが、今では俺もこのオジサンと同じくらいの年齢になった。
そして、俺は相変わらずバイトをしている。
このオジサンと同じになった。
いや、バイトが続かず、転々としているだけ俺の方がタチが悪い。
地下鉄の売店前へ新聞を投げて、戻ってくる。
この作業を各駅で繰り返す。
明け方、東の空が白んできた頃、会社へ戻ってきた。
俺はもう、腕も脚も力が入らずヘロヘロだった。
結局、2日で辞めてしまった。
今回は
バックレず、ちゃんと断わって辞めた。
なので給料は受け取れた。