「ダメ人間」の履歴書。

働くの大嫌いな俺様がイヤイヤ働いてきた記録。

第9章 整骨院

さて、またしても無職になってしまった俺だったが、ヒマを愉しむ余裕は無かった。

急いで仕事を探す必要があった。
家賃の支払日が近づいていたのだ。

しかし、求人誌の発売まではまだ日がある。
現代のようにネットで求人を見られる時代ではなかった。

ヒマな俺は街をブラついていた。
季節は夏。
とにかく暑い(熱い!)。

家に居りゃよかった。
外出した事を後悔した。
俺は暑さに強い方だったが、暑いのが好きなわけではなかった。

暑さに耐えつつ商店街を歩く。
そこは緩やかな坂道が長ーく続く商店街で、かつては宿場だったらしい。
その名残りは全くと言っていいほど見受けられなかったが。

商店街の中程だろうか、整骨院の前を通りかかった時だった。
「スタッフ募集」
みつけてしまった。
しかも無資格オーケーだという。

俺の勝手なイメージで、エアコンの効いた涼しい室内でラクな仕事なんじゃないかと思った。

ドアを開け、求人について伺う。
禿げ頭の院長らしきオジサンが対応した。

その場で採用され、明日から来てくれと言う。
よっぽど人手不足なのか?

翌日、仕事内容は聞かされないまま、俺は整骨院へ向かった。

無資格でオーケーとの話だったが、これには法的根拠があるらしい。
民間療法が認められているので大丈夫だとか何とか・・。
よく分からんが。

しかし、将来的には柔道整復師の資格を取ってほしいと言う。

いや、学費お幾ら万円だい?
無理でしょ!

「親に頼めば通わせてくれるでしょ。」
禿頭の院長は軽く言う。

いやいや、親となんてしばらく会ってないし、電話すら掛けた事ないわ。(この時代、まだメールなんて無かった。もちろんLINEも無い。)

初日で暗雲が立ち込めてきた気がした。

この日の仕事は・・・。

いきなりマッサージだった!
やった事ねぇよ!

どうやるのか分からないまま、見様見真似でやってみた。

すぐに、腕が疲れてきた。
前腕がパンパンだ。

なのに、患者のババアは「もっと強く」とか言いやがる。

俺の(勝手な)ラクな仕事というイメージは覆された。

かなりの肉体労働。
それにババアがやたらと話しかけてきやがる。

俺はババアという生き物が苦手だった事を思い出した。
当然、会話なんて弾まない。

そんなこんなでクタクタに疲れて初日を終えた。

手渡しで封筒に入った日給を渡された。
確か、6千なんぼとかだったと思う。
今より最低賃金は安かったが、その中でも最低賃金ギリギリの賃金だったんじゃないか?

そして翌日、俺は行かなかった。
またバックレたのだ。
まぁ、ダメ人間なんで、こんなモンなのだ。

しかし、家賃どうすっかな・・・。