「ダメ人間」の履歴書。

働くの大嫌いな俺様がイヤイヤ働いてきた記録。

第10章 運送屋

またしても失業してしまった俺。
だが守備よく次の仕事をみつけてきた。
今度は運送屋だ。

と言っても運転ではなく、倉庫の仕事だ。
棚から商品を取り出して、各トラックごとにまとめておく。(これをピッキングとか言うらしい。)

今回の職場、ちと遠い。
自宅のある新宿から中央線で神田まで出て、乗り換えだ。

ここで問題が。
この頃の俺は貧血に悩まされていた。

朝の混雑した電車では座れるハズもなく、立ちっぱなしの状態では、たちまち気分が悪くなってしまうのだ。

特にこの中央線、新宿を出ると次の四谷まで停車しない。
これが地獄なのだ。

乗った瞬間、貧血を起こす。
降りようとするが、客の乗り込む勢いで降りられない。

これでもう、次の四谷まで耐えるしかない。

四谷駅に着いた。
すぐに降りる俺。

目の前にベンチが。
しかし、すぐには座らない。
もちろん本当はすぐにでも座りたい。

だが、ここでヘタリこんでしまったら、貧血おこして気分が悪いのがバレバレではないか。

さすがにコレは恥ずかしい。
俺はベンチを取られないように座席の前に立ちながら、時計を見るフリをしたりして、電車が発車するのを待つ。

ここが根性の見せドコロだ。

電車が発車したのを見届けてから、俺はゆっくりとベンチに腰を下ろす。
あくまでも平静を装う。

何とか耐えきったという安堵感。
景色はすでに色が無くモノクロに見えていた。




こういった、脳貧血が毎週1回は発症していた。
電車通勤は苦痛でたまらなかった。

さて、こうした苦痛を乗り越えて出勤すると、同僚のオジサンがすでに出勤していた。

同僚と言ってもこのオジサン、勤続40年のベテランで、以前はトラックに乗っていたのだが、定年間際という事で、高齢で運転は危険だと判断され、倉庫勤務へ回されていた。

高齢だからハードなトラック勤務より、倉庫でラクな勤務をしてもらおうという思惑もあったらしい。

だが、オジサンにとっては迷惑な話で、トラック勤務の頃は自宅からトラックを運転して出勤してこれたので、通勤ラクラクだったらしいのだが、倉庫勤務の今では自転車通勤になってしまった。

なにしろこのオジサン、2つ区をまたいで通勤しているのだ。
毎日とんでもない距離を走ってきていた。

本人は通勤が大変だと言っていたが、(実際、大変なのだろうけど)しかし余裕すら感じられた。

オジサン世代のこの体力の凄さを何なのだろう。
現代人が弱くなったといえば、まぁ、そうなのだろうけど。

今、自分が歳をとってみて、体力の低下を著しく感じているのだが、それでもこのオジサンよりもまだ若いのだ!

ここの倉庫は物流倉庫と呼ぶには少々狭く、おかげで、歩行距離は短く仕事的にはラクなほうだったと思う。

扱う商品も軽い物が多かった。
扱っているのは建具なのたが、ドアような大型商品はほとんど無く、コンセントカバーとか、ガラスグローブ(照明のカバーね。)とか、小型の物や軽い物がほとんどなのだ。

仕事内容がラクなので、しばらく続けてみる事にした。
問題は俺の貧血だな。
何とかならんものか・・・。