第10章 運送屋2
まだ何とか勤務を続けていた俺。
貧血は治らない。
この頃になると貧血を発症する頻度は週2回程度に増えていた。
ある日、午前の作業が一段落し、小休止しているとトラックドライバーがニヤニヤしながら近づいてきた。
仲の良かったオニイチャンだ。
「面白い物みつけた。」
見ると、手にカセットテープを持っていた。
この頃はMD(ミニディスクってやつね。)が音楽の記録媒体としては主流だった時代で、(結局、MDは短命に終わってしまったが。)カセットテープはダサいというか、年配の人が使う物ってイメージだった。
オニイチャンのイメージにカセットテープは違和感を感じた。
話を聞くと、昨日、彼が有給休暇をとったので、常務が彼のトラックを運転したのだと言う。
どうやら、このカセットテープは常務がトラックに忘れていった物らしい。
で、このカセットテープに録音されていた内容だが、常務の声と高校生らしき女のコの声だった。
「こんな事できません。」
「出来ないじゃ困るんだよ、こっちはおカネはらってるんだよ!」
常務、何をやってるんですか!?
この頃は援助交際という言葉が出始めの頃だったと思う。
さすが常務!流行りの援交に乗ったわけですね!
てか何で録音してるんだろう。
そういう趣味か性癖か・・。
・・・何をやってるんだか。経営は大丈夫なんだろうか。
さて、なかなか面白い職場だったが、ここも結局辞めてしまった。
貧血を克服できず、通勤苦に耐えられなかったのだ。
貧血や立ちくらみは今も度々発症している。
鉄分は採ってるんだけどなー。