第14章 バス清掃。
さて、仕事を辞めまくってた俺はさすがに金欠でヤバくなってきた。
とりあえず何でもいいから働かなくては!
と思いつつも、その日は求人誌の発売日ではなく、求職活動は出来なかった。
今みたいにスマホでネットで簡単検索!なんて時代ではなかったのだ。
仕方がないので、ちと遠いがハローワークまで行く事にした。
その道中、観光バスの駐車場の前を通った時だった。
貼り紙を見つけた。
「観光バス清掃。急募」
とりあえずココでいいか。
事務所へ入っていき、話を訊いてみた。
なんでも清掃とは車内の掃除の事で、外側を洗う洗車とは別のものだそう。
掃除機をかけて、窓の内側を拭くだけだという。
「今夜から来てみたらどうだ?」
と、これまたアッサリ採用されてしまった。
アッサリ採用されるとロクな事にならないのは、ここ最近で経験済みだったので気にはなったが、金欠なので背に腹は代えられない。
今夜から働きに行く事にした。
仕事は夜からで4時間程度、年金受給者のパートだったり、サラリーマンの副業として働いている人が多いとの話だった。
ダブルワークってやつか。
世の中の人はよく働くものなんだなぁ。
働かない俺はダブルワーカーにはどんな風に見えるのだろう?
さて、仕事内容と言えば、ホントに掃除機と窓拭きだけだった。
こんな事は家で毎日している。
失業中は暇だから掃除だけはしていたのだ。
仕事は初日で覚えられた。
指導したのは年金受給者のジジイだった。
このジジイ、「俺はここで二番目に長い」とか「分からない事は○○さん(一番長い人)ではなく俺に訊け」とか何かと俺様一番的でウザイ。
老害か?
ラクだし家から近い事もあり、しばらく働いていたのだが、事件が起こる。
このジジイ、「今日は用事があるから先に帰る。タイムカードは帰る時に一緒に押しておいて。」
は?お前もパートだろうがよ。働かずにカネだけ貰うつもりかよ。
ムカついた俺は当然、事務所に言いにいったのだが、信じられないといった様子だった。
一応、本人に訊いてみるとの事だったが、事務所側は俺よりジジイを信頼しているようだ。
結局、ジジイは嘘を吐き通し、事務所はそれを信じたようだ。
俺の虚言、狂言だと思ったのか。
こんな糞どもと一緒に働きたくなかった俺は、仕事を辞めた。
ただ腹が立ったのでジジイの家のポストに拾った糞を詰めてやった。
糞ジジイにぴったりだ。
器物損壊とか何らかの犯罪になるのだろうが、もう時効だろう。